cine works

トランシルヴァニア


監督・脚本・音楽:トニー・ガトリフ
        『ラッチョ・ドローム』『ガッジョ・ディーロ』『愛より強い旅』
撮影:セリーヌ・ボゾン
編集:モニック・ダルトンヌ
音楽:トニー・ガトリフ、デルフィーヌ・マントゥレ
出演:アーシア・アルジェント『マリー・アントワネット』、
   アミラ・カサール『原色パリ図鑑』、
   ビロル・ユーネル『愛より強く』
2006年/フランス/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD/102分
協力:ユニフランス東京/東京日仏学院
配給:日本スカイウェイ

トランシルヴァニア2006年カンヌ映画祭クロージングを熱く飾ったトニー・ガトリフ監督最新作

トランシルヴァニア

真実の愛を捜して、過去を乗り越え、東欧の森の彼方を旅する女と心の傷を癒してくれる男…常に自らのルーツでもある“流浪の民=ロマ(ジプシー)”を永遠のテーマに作品を撮り続けているガトリフ監督ならではの心の襞まで映し出そうとする映像。哀調の旋律と躍動のリズムが湧き出るサウンドとのコンビネーション。映像と寄り添うようにロマの音楽とダンスが登場し、言葉では表現出来ない生命力がちりばめられている。本作はトランシルヴァニアの不思議な魅力溢れる民俗音楽を元に監督がオリジナルの曲を作り、現地で出会ったミュージシャンたちが演奏し全編を効果的に彩る。


トランシルヴァニアヒロインは、女の魂の再生を見事演じる情熱の戦士アーシア・アルジェント

トランシルヴァニア

本作は監督が以前から描きたかったテーマ「愛する男を捜すために世界の果てへと旅立つ女性」、監督初の女性が主役の映画である。異郷の地を舞台に傷つき苦しみながら、自らを再生していくジンガリナをアーシア・アルジェントが激しい情熱の中に怒り、哀しみ、喜び、脆さ、すべてをさらけ出し体当たりで演じている。そして、ジンガリナの親友マリーをシャネル、ゴルチエのモデルとして活躍後、女優デビューを果たしたアミラ・カサールが熱演。破滅的な危うさと繊細な優しさを併せ持つチャンガロを圧倒的な存在感でビロル・ユーネルが演じた。


トランシルヴァニア真実の愛を求めて、遥か森の彼方で出逢った女と男の魂に突き刺さる物語

トランシルヴァニア

突然、姿を消した恋人を見つけるために、ジンガリナは親友マリーとともに彼の故郷トランシルヴァニアへと旅立つ。異教の祭礼で恋人と再会を果たすが、彼にはもはや愛情のかけらさえ残っていなかった。ジンガリナは妊娠していたことも告げられず、絶望の淵に立たされる。狂気、喧嘩、音楽、そして、祭りへの陶酔の中で愛を失い、この世で唯一人という孤独感を味わう。どん底を味わい、再び、旅に出たジンガリナは謎めいた男チャンガロと出会い生まれ変わる…。

SYNOPSIS

愛するほどに傷ついて、傷つくほどに愛を求めて―――
森の彼方の国で出逢った、女と男の魂に突き刺さる物語

トランシルヴァニア
突然、姿を消した恋人ミランを見つけるため、ジンガリナ(アーシア・アルジェント)は親友のマリー(アミラ・カサール)と共にミランの故郷トランシルヴァニアへと旅立つ。ミランの実家にたどり着くが、家族は引越した後だった。悲しみにくれるジンガリナを音楽が勇気づける。ミランがミュージシャンだったため、ロマの楽士たちにミランを知らないか尋ね、ついにジンガリナはミランを見つけ出す。しかし、ミランには、もはや愛情のかけらさえ無かった。

絶望に打ちひしがれるジンガリナ。彼女はミランの子を身ごもっていたのだ。

トランシルヴァニア
祭りの喧騒の中、泣き叫ぶジンガリナをマリーが大声を出して呼ぶ。マリーはジンガリナが心配でならない。彼女のことを愛しているのだ。だが、ジンガリナはこの異国の地で何かを見つけ再生することを求め、マリーと決別する。

トランシルヴァニア
荒涼とした大地をジンガリナとジプシーの少女バンダナが歩いている。傷ついたジンガリナをバンダナが慰める。そんな二人をチャンガロ(ビロル・ユーネル)が見つけ声をかける。しばらくして、バンダナは追いかけるジンガリナを残し去って行った。

チャンガロとジンガリナ、二人の旅が始まる。

体の中に悪魔がいると思い込んでいるジンガリナにチャンガロは悪魔払いの儀式を手配する。白い衣裳を身にまといジンガリナの頭の上からミルクがかけられ、身も心も清められた。二人で暮らしていても何も過去を話さないジンガリナに、チャンガロは時に挑発しケンカもするが、彼女をいつも見守っている。

雪の大草原を車を走らせている時、ジンガリナが産気づいた。あたりには人の気配もなく、チャンガロは必死に助けを求め続けると馬車を走らす村人に出会えた。親切な村の女たちがジンガリナの出産を手伝いに来た。だが、不安と恐怖からジンガリナは泣き叫びチャンガロに助けを求める。

トランシルヴァニア
無事、出産を終えたジンガリナと生まれたての赤ん坊がいる部屋にどうしてか入れないチャンガロ。ジンガリナは車で去っていくチャンガロを窓辺でだまって見つめていた。

トランシルヴァニア
チャンガロは自らのために楽士たちに演奏を頼み、音楽と酒に身を浸す。彼の様子は、迷いと苦しみに満ち、途方もなく切ない。楽士たちは、ついにいたたまれなくなり「音楽は生きるための力だ。苦しむためじゃない」と言い、チャンガロを残し去って行く。

小さな酒場で飲み続けるチャンガロは、ついに何かを決心したように、ジンガリナと赤ん坊がいる部屋に戻るとそこにはもはや彼女はいなかった。随分と長い間、チャンガロは留守にしていたのだ。

ある日、チャンガロはジンガリナを見つけた。赤ん坊と眠る彼女はまるで聖母マリアのようだ。
LISTE ARTISTIQUE/CAST PROFILE
キャスト


アーシア・アルジェント(ジンガリナ)

1975年イタリア・ローマ生まれ。父はホラー監督の巨匠ダリオ・アルジェント、母は女優ダリア・ニコロディ、姉はフィオーレ・アルジェント。

トランシルヴァニア
アーシアは、ちょうど『サスペリア2』の制作された年に生まれた。9歳の時、セルジオ・チッティ監督のTVドラマ『Sogni e bisogni』(84-85)で母と共演しデビュー。1987年ピーター・グリーナウェイ監督『Zoo』でヨーロッパ・ゴールデン・グローブ賞受賞。父、ダリオ・アルジェント監督『トラウマ/鮮血の叫び』(93)、『スタンダール・シンドローム』(96)、『オペラ座の怪人』(98)に主演。ダリオ・アルジェント製作、ランベルト・バーバ監督『デモンズ2』(86)では、幼女イングリッド役、ミケーレ・ソアビ監督作『デモンズ3』(88)、では少女ロッテ役を演じた。1989年ナンニ・モレッティ監督『赤いシュート』での演技が大評判となり、注目を集める。

ピーター・デル・モンテ監督の『雨上がりの駅で』(96)では名優ミッシェル・ピコリと共演。ピコリと旅する少女コーラ役で、イタリアのアカデミー賞といわれるデビッド・デ・ドナテッロ主演女優賞を受賞。フランスのパトリス・シェロー監督作『王妃マルゴ』(94)ではフランス語で演じ、イギリスのマイケル・ラドフォード監督『B.モンキー』(98)では英語で不良少女役を好演、また、アメリカのロブ・コーエン監督『トリプルX』(02)、ソフィア・コッポラ監督『マリー・アントワネット』(06)では、娼婦から成り上がったマダム・バリー役など幅広く国際的に活躍。1994年には、オムニバス映画『Degenerazione』で初監督をこなす。

その後、2000年に性器の上にタトゥーを入れ、煙草をふかしながら脇毛を剃り、SEXが趣味というオンナが主人公の問題作『スカーレット・ディーバ』が話題に。2004年には、監督・脚本・主演の三役でピーター・フォンダ、ウィノナ・ライダーを起用し、カリスマ作家JTリロイの自伝的小説『サラ、いつわりの祈り』を映画化するなど注目される。

アーシアには、お腹に“天使”、背中には“目”のタトゥーがあり、目の下のくまも、三白眼も、彼女独自の美しさの要素となっている。ホラー、セクシー入り混じって、唯一無二の存在感をもつ女優。


アミラ・カサール(マリー)

トランシルヴァニア
1971年イギリス・ロンドン生まれ。クルド人の父親とロシア人の母親を持ち、イギリスやアイルランドで育つ。14歳のときに写真家のヘルムート・ニュートンに見出され、シャネルやジャン=ポール・ゴルチエのモデルとして活躍しながらパリで演劇を学ぶ。

1997年トーマス・ジル監督『原色パリ図鑑』でセザール賞にノミネートされる。その後、マニュエル・プラダル監督『アデュー、ぼくたちの入江』(97)、スティーヴ・バロン監督『アラビアン・ナイト』(99)、クリスティン・ジェフズ監督『シルヴィア』(03)などがある。


ビロル・ユーネル(チャンガロ)

1961年トルコ生まれ。舞台俳優として演技のキャリアをスタートさせたユーネルは、1992〜93に「カリギュラ」や「Bericht an Akademie」の演出のみならず、主役も演じている。2004年にファティ・アキン監督のベルリン国際映画祭金熊賞受賞作品『愛より強く』(04)では、セクシーで暴力的、クールでパンクな中年男を熱演し、話題となる。

トランシルヴァニア
主な作品に、トーマス・ブラッシュ監督『The Passenger』(88)、『A Wopbopaloobop a Lobbamboom』(89)、ダニー・レヴィ監督『Ohne mich』(94)、ファティ・アキン監督『太陽に恋して』(00)、ジャン=ジャック・アノー監督作品『スターリングラード』(01)などがある。
LISTE TECHNIQUE/DIRECTOR PROFILE
スタッフ


監督:トニー・ガトリフ

1948年アルジェリア生まれ。父親はフランス人、母親はアンダルシア出身のロマ(ジプシー)。60年代の転換期にアルジェリアを去り、フランスに渡る。

トランシルヴァニア
サンジェルマン・アン・レイ演劇学校に学び、E・ボンド作クロード・レイジ演出による「救われた人々」で初舞台を踏む。

1975年に16ミリの白黒長編『LA TETE EN RUINES』で映画デビュー。1983年、パリ郊外に定住したロマを同情せずに感情移入を抑えて描いた『LES PRINCES』で海外の映画賞を数多く受賞し、世界的に認められる。自らのルーツでもある“流浪の民=ロマ民族(ジプシー)”を永遠のテーマに作品を撮り続けている。

主な作品に、老女と二人の男との心温まる交流を描いた『ガスパール、君と過ごした季節(とき)』(90)、ジプシーの民族史ともいえる“音楽”を通して、彼らの生命力と民族の強い絆を描いた『ラッチョ・ドローム』(93)、無垢で自由奔放な少年少女の姿や、美しい自然をとらえた詩的な映像『モンド』(96)、ルーマニアを舞台に魂の音楽と真実の愛に気づき成長していく青年の物語を鮮やかに描いた『ガッジョ・ディーロ』(98)、アントニオ・カナーレスを主演に迎え情熱のフラメンコを見事に映像化した『ベンゴ』(00)、白人の少年とジプシーの少女との小さな恋を描いた、ジャンゴ・ラインハルトへのトリビュート映画でもある『僕のスウィング』(02)、恋人同士が自らのルーツをたどる旅に出るロード・ムービー、カンヌ国際映画祭監督賞受賞作品『愛より強い旅』(04)などがある。

ガトリフ作品では毎回出演する多彩なミュージシャンも魅力で映画ファンだけでなく、多くの音楽ファンにも人気を集めている。
トランシルヴァニア

トランシルヴァニア [シアター]イメージフォーラム
渋谷駅より徒歩8分。宮益坂上がり先、右手入る。

TEL.03-5766-0114
トランシルヴァニア